○若桜町森林もりづくり条例

平成31年4月1日

条例第2号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第8条)

第2章 基本的施策(第9条~第20条)

第3章 雑則(第21条)

附則

前文

本町は、総面積の約95%が森林であり、スギを主体とした人工林は、民有林面積の約6割を占めている。

植林の歴史は少なくとも300年前にさかのぼり、林業は古くから本町の最も重要な基幹産業として、町民の暮らしを支えてきた。先人達が育てた優良で豊富な森林資源や、林業と密接な関わりの中で育まれてきた緑豊かな景観は、町の象徴であり、若桜町の歴史は林業の歴史とも言える。

本町の森林は、水源のかん養や土砂流出、山地崩壊の防止、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能を発揮するとともに、森林の生み出す清らかな水と養分は、田畑を潤し、海域の環境を良好に維持するなど、下流域の人々にも多くの恩恵をもたらしてきた。

しかし、森林・林業を取り巻く現状は、木材価格の長期低迷や林業の採算性の悪化、所有者の不在や高齢化、山林に対する関心の低下等により、人工林の齢級構成の偏りや間伐などの手入れの行き届いていない森林が多くあるなど、多くの課題を抱えている。

この課題に対して、「植える」、「育てる」、「使う」、「植える」という森林資源の循環利用の促進と、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるため、森林を適切に管理し、森林資源の有効活用に努める必要がある。また、町、森林組合、事業者、森林所有者及び町民一人一人が、先人達の育てた優良で豊富な森林資源について理解を深め、それぞれの責務、役割により、森林づくりに主体的に参画し、連携を深めていくことが重要である。

森林資源の有効活用と次の世代への継承を通じて、私たちの町が「若桜材産地」であることに自信と誇りを持ち、もって林業の成長産業化の実現による本町産業の発展を目指し、ここに、若桜町森林づくり条例を制定するものである。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、町民等の主体的な参画による森林づくりに関する施策の基本となる理念を定め、町等の責務及び森林所有者等の役割を明らかにするとともに、森林づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって林業の成長産業化の実現による本町産業の発展に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 森林 町内に存する森林法(昭和26年法律第249号)第2条第3項に規定する民有林をいう。

(2) 多面的機能 山地災害の防止、水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の防止、木材その他の林産物の生産及び供給、公衆の保健等の森林の有する多面にわたる機能をいう。

(3) 公益的機能 多面的機能のうち、木材その他の林産物の生産及び供給を除いた機能をいう。

(4) 森林づくり 森林の有する多面的機能を持続的に発展させるため、森林を適切に管理するとともに有効に活用することをいう。

(5) 森林資源の循環利用 育林から伐採を通じて森林から木材その他の林産物を繰り返して生産するとともに有効に活用することをいう。

(6) 森林所有者 権原に基づき森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者をいう。

(7) 森林組合 町内で事業を行う森林組合法(昭和53年法律第36号)に規定する森林組合をいう。

(8) 事業者 町内において森林の施業並びに木材その他の林産物の生産、加工及び流通の事業を行う者(森林組合を除く)をいう。

(9) 町民等 町内に居住する個人又は町内において事業若しくは活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(基本理念)

第3条 森林づくりは、町、森林組合、事業者、森林所有者及び町民等の適切な役割分担のもとに相互の連携及び協力により、この条例の目的を達成するため、次の基本理念(以下「基本理念」という。)により行うものとする。

(1) 森林が有する多面的機能が、広く町民等に恵みをもたらしていることにかんがみ、町民等の理解と主体的な参画により推進されなければならない。

(2) 森林の有する公益的機能が町民生活の安全及び安心の基盤であることから、地域の自然的条件及び社会的条件を踏まえ、長期的な展望に立って計画的に推進されなければならない。

(3) 林業及び木材産業等の健全な発展が森林の適正な管理に寄与することから、林業及び木材産業を振興することにより、森林資源の循環利用が可能な森林づくりが推進されなければならない。

(4) 森林は先人達が育てた豊富な資源であり、地域の活性化につながる素材として認識し、まちづくりと一体となって森林づくりが推進されなければならない。

(5) 持続的な森林の整備を図るに当り、その担い手を将来にわたり確保することの重要性にかんがみ、森林づくりを支える人材の育成を図ることにより、推進されなければならない。

(町の責務)

第4条 町は、基本理念にのっとり、森林づくりに関する基本的かつ総合的な施策の推進に努めなければならない。

2 町は、国、県及び他の地方公共団体との連携を図るとともに、公共的団体、関係団体等に対し、必要に応じて理解と協力を求め、森林づくりによる森林資源の有効活用の推進に努めなければならない。

3 町は、森林づくりに関する情報の提供を通じて、町内外の者がこの条例の基本理念について理解が得られるよう努めなければならない。

(森林所有者の責務と役割)

第5条 森林所有者は、森林経営管理法(平成30年法律第35号)第3条第1項の規定に基づき、その権原に属する森林について、適時に伐採、造林及び保育を実施することにより経営管理を行わなければならない。

2 森林所有者は、所有し又は育成する森林の境界及び木竹の状況を把握するよう努めなければならない。

3 森林所有者は、町が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(森林組合の役割)

第6条 森林組合は、基本理念にのっとり、町における森林の経営の中核的な担い手として、森林づくり及び森林資源の有効な利用の促進に積極的に取り組むとともに、町が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

2 森林組合は、森林の管理が適正に行われるよう当該組合員に働きかけるとともに計画的に森林づくりに取り組むよう努めなければならない。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、その事業活動を行うに当っては、基本理念にのっとり、森林の多面的機能の確保に配慮するとともに、町が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(町民等の役割)

第8条 町民等は、基本理念にのっとり、森林がもたらす恵みを享受していることを深く認識し、森林づくりに関する活動に積極的に参加するとともに、町が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

第2章 基本的施策

(森林整備の推進)

第9条 町は、将来にわたって森林整備の推進及び林業並びに木材産業等の健全な発展を図るため、森林資源の循環利用、森林の境界の明確化、林地台帳の整備その他森林施業の推進に必要な措置を講ずるものとする。

(効果的かつ効率的な森林づくり)

第10条 町は、効率的かつ効果的な森林整備及び保全を図るため、町内を流域等で区分した地区ごとに森林整備の現況の把握及び目標の設定を行い、森林づくりの整備方針(ビジョン)を作成するものとする。

(推進体制の整備)

第11条 町は、森林づくりの促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、町、県並びに他の地方公共団体、森林所有者、森林組合、事業者及び町民等が意見を交換し、相互に連携することができるようにするための体制の整備に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(町産材の利用の拡大)

第12条 町は、町産材の利用の拡大を図るため、住宅等への活用の促進、町民等に対する理解の促進、公共事業への利用の推進及び加工流通体制整備のための支援その他必要な措置を講ずるものとする。

(まちづくりと一体となった森林づくり)

第13条 町は、森林資源を活かしたまちづくりを推進するため、森林づくりに関わる就業機会の確保、定住に対する支援及び都市又は地域との交流の促進その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(森林づくりの普及啓発)

第14条 町は、町民等に対して、森林づくりに関する普及啓発を行うものとする。

2 前項に規定する普及啓発を推進するため、「若桜町森林に親しむ期間」を定め事業を推進する。

(森林づくり表彰)

第15条 町は、町民等で森林づくりの推進に寄与したと認められる者及び団体を別に定めるところにより表彰することができる。

(森林づくりの担い手の確保及び育成)

第16条 町は、関係行政機関と連携し、森林づくりの担い手となる人材の確保及び技術者の育成を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

(町有林の管理運営)

第17条 町は、町有林について、公益的機能の維持増進を図るため、計画的かつ適切な管理運営を行うものとする。

(森林所有者及び町民等の意見の把握)

第18条 町は、森林づくりに関する施策を推進するため、森林所有者及び町民等の意見の把握に努めるものとする。

(町民等の理解の促進)

第19条 町は、森林づくりに対する町民等の理解を促進するため、毎年度、森林整備等の状況及び町が講じた森林づくりに関する施策の実施状況等について、その概要を公表しなければならない。

(財政上の措置)

第20条 町は、森林づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第3章 雑則

(委任)

第21条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

若桜町森林づくり条例

平成31年4月1日 条例第2号

(平成31年4月1日施行)